公演イベントレポート

「いのちこそのさり—これからの十年をつなぐ一歩」によせて

公演日2016年11月16日(水)
公演タイトル荒馬座水俣公演
実施場所水俣市立袋小学校体育館

TEXT:社会福祉法人さかえの杜ほっとはうす 加藤 タケ子

2016年11月の荒馬座水俣公演は、ほら貝が鳴り響き海底の魂からかけ声がかかったような威勢のよい開幕で、潮の香も清々しい海辺の水俣市立袋小学校からスタートしました。洗練された太鼓や唄に響き合う笛や踊りの優雅さが次の一瞬、躍動感あふれる舞台に転換する醍醐味を市民も小中学生も患者たちも堪能しました。主催した水俣病胎児性患者等も各会場で挨拶し、子どもたちを笑顔で見守り、日々の苦難から少しだけ解放されたような『ほっと』した時間がありました。
二〇〇一水俣ハイヤ節は、水俣病患者でほっとはうすの初代理事長である杉本栄子さんが、語り部になってもなかなか言葉が届かない、水俣病の思いが届かないと思っていたときに、荒馬座に出会い、一緒につくりあげた踊りです。歌や踊りで水俣病の中から見出されてきた生活文化(環境との共生)を地道に紡いで、以来十六年間市内の小中学校の運動会で踊り継がれてきました。水俣病事件に裏打ちされ、故郷水俣の自然と人々の心の豊かさが歌と踊りの原点。このことを継承するために毎年のように各学校に赴き水俣病事件から紡ぎだされた文化の豊かさを語り伝えています。

一足飛びには解決できない課題を山ほど抱えながら、可能な限り自立した地域の暮らしを実現する道を多くの人たちの支援の中で自ら切り拓いてきた胎児性・小児性患者たち、いのち(生命)の原点に立ち返った一人一人の思いをさらに共有する場として今回の公演を企画しました。二〇一六年は、水俣病事件公式確認六十年、この前後に誕生した胎児患者等のいのちの重みの上に立って歴史が刻まれてきました。この節目に相応しい荒馬座水俣公演でした。

『二〇〇一水俣ハイヤ節』も含め日本各地の洗練された文化=民族芸能の舞台は、次世代を担う子どもたちの心に深い感動を残し、水俣病を生き抜いた患者たちの志高い生きざまに重なり、十年後、二十代になる世代が心豊かな気持ちで水俣病事件を伝える主体になってくれることに淡い期待をしています。

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